「彼に家庭があることはわかっているのに、どうしても離れられない」――。
この悩みは、誰にも言えない苦しみを抱える女性たちの中で、少なくありません。
既婚男性との恋愛は、表では語られにくいテーマですが、実際には年齢や環境を問わず多くの女性が経験しています。
匿名相談として寄せられたこのテーマは、恋愛心理の中でも最も深く複雑な領域。
「不倫」という言葉にネガティブなイメージがつきまとう一方で、感情そのものはコントロールできるものではありません。
この記事では、心理学的な視点、体験談、そして抜け出すための具体的ステップを交えながら、“苦しい関係”から自分を取り戻す方法を丁寧に解説します。
匿名相談:「彼は既婚者。分かっているのに離れられません」
彼は職場の上司で、最初はただ頼れる存在でした。気づけば惹かれていて、告白されたときにはすでに好きになっていました。
「家庭は壊すつもりはない」と言われて、それでも一緒にいたくて関係を続けてしまいました。
会える時間は限られ、連絡もままならない。幸せよりも苦しい時間のほうが多いのに、どうしても彼を忘れられません。
自分でもどうすればいいか分かりません。(30代・女性)
このような悩みは、決して珍しくありません。
実際、心理カウンセラーのもとには「不倫関係から抜け出せない」「彼を忘れたいけれど心が追いつかない」といった相談が多数寄せられています。
理性では「いけないこと」と分かっていても、感情はそう簡単に切り替えられないのです。
心理学で見る「既婚男性に惹かれる心理」
既婚男性との恋愛には、いくつかの心理的背景があります。
単なる「刺激的な恋」ではなく、無意識のうちに満たされない心の隙間が関係している場合が多いのです。
① 安定感への憧れ
既婚男性は、独身男性に比べて「落ち着いている」「包容力がある」「頼れる」と感じられることが多いです。
これは心理学でいう「投影効果」によるもので、相手の成熟した部分に“理想の父性”を重ねてしまうケースもあります。
② 承認欲求の満たし方
「家庭があるのに、私を選んでくれた」という状況が、一時的に強い自己肯定感を与えることがあります。
しかし、それは根本的な満足ではなく、“選ばれた感”という一時的な快感に過ぎません。
やがて「本当は私は2番目なんだ」と現実に気づき、苦しみが増していくのです。
③ 禁断の恋のドーパミン効果
人は“禁止されるほど欲しくなる”傾向があります。
心理学ではこれを「ロミオとジュリエット効果」と呼び、障害がある恋ほど情熱が強くなるのです。
しかし、この感情は長期的な安定ではなく、一時的な高揚にすぎません。
体験談①:「彼が家庭に帰る夜、心が壊れそうだった」
Aさん(33歳)は、取引先の男性と不倫関係にありました。
「妻とはうまくいっていない」「いつか離婚する」と言われ、信じ続けて3年。
しかし、彼が実際に家庭を離れることはありませんでした。
Aさんは次第に不安と孤独に押しつぶされ、体調を崩すほどになってしまいました。
Aさんはカウンセリングを受け、「彼に依存している自分」に気づきました。
「彼がいないと生きられない」と思い込んでいたけれど、それは“愛情”ではなく“執着”だったのです。
今では「一人になっても大丈夫」と思えるようになり、少しずつ新しい生活を始めています。
心理学的に言えば、これは「愛着不安型」の恋愛パターンです。
幼少期に「愛されたいのに十分に満たされなかった経験」がある人は、恋愛において相手に強く依存しやすい傾向があります。
それが既婚男性のような“手に入りにくい相手”に惹かれる原因のひとつにもなります。
Q&A:「不倫関係をやめたいのに、なぜ離れられないの?」
Q1:理性ではわかっているのに、気持ちがついていきません
A:それは「心理的依存」の状態です。
脳の仕組みとして、恋愛中はドーパミンが大量に分泌され、快感や幸福感をもたらします。
しかし、会えない時間や連絡が途絶えると、脳が「禁断症状」のようなストレス反応を起こすのです。
これにより、「もうやめたい」と思いながらも、再び彼を求めてしまいます。
Q2:彼が「いつかは一緒になろう」と言うのを信じてしまいます
A:残念ながら、“いつか”という約束は多くの場合、現実にはならないことが多いです。
心理的には「認知的不協和」の状態――つまり、“いけない関係”を正当化するために、都合の良い理由を信じ込もうとするのです。
「彼は離婚を考えている」「家庭が冷めている」などの言葉にすがることで、心のバランスを保っている状態です。
Q3:彼に会えない時間が辛くて、自分が壊れそうです
A:それは「空虚感」と「依存の反動」によるものです。
恋愛において依存が強くなると、相手がいない時間に“自分の存在価値”を見失います。
この空虚感を埋めるために再び彼を求めてしまう――このループが苦しみを深めるのです。
解決の第一歩は、「彼といない時間に何をするか」を決めること。
小さな習慣でも、心の回復には大きな意味があります。
体験談②:「奥さんと別れるって言葉を、何度も信じてしまった」
Bさん(36歳)は、同じ会社の上司と1年半関係を続けていました。
「家庭ではうまくいっていない」「君が唯一の支えだ」と言われ、信じてしまったそうです。
しかし、ある日彼のSNSに“家族旅行”の写真がアップされているのを見て、現実を突きつけられました。
「裏切られた」という怒りよりも、「自分が愚かだった」という悲しみが強かったと話しています。
Bさんはその後、自分の感情を整理するためにノートに気持ちを書き続けました。
「彼に言われた言葉」「信じた瞬間」「我慢していたこと」――すべてを書き出すことで、冷静に見えるようになったのです。
半年後には「私は誰かの2番目じゃない」と言えるようになり、新しい恋に踏み出しました。
心理学的「不倫依存」から抜け出す5ステップ
ここからは、実際に苦しい関係から抜け出すための具体的な方法を紹介します。
一度にすべてを実行する必要はありません。できることから少しずつ始めましょう。
ステップ①:現実を直視する勇気を持つ
「彼は家庭を壊さない」と言うなら、それが現実です。
「でも、いつか変わるかも」という希望は、あなたを縛りつける鎖になります。
事実を“感情抜きで見る”ことで、少しずつ依存の力は弱まります。
ステップ②:感情を吐き出す場所を作る
苦しみを抱えたまま一人で耐えると、心は壊れてしまいます。
信頼できる友人やカウンセラー、または日記・SNSなど、感情を外に出す方法を持ちましょう。
「言葉にする」ことで、脳が少しずつ冷静さを取り戻します。
ステップ③:連絡・SNS・写真を整理する
依存の原因は「彼の痕跡」です。
メッセージや写真を残していると、脳が再び記憶を呼び戻してしまいます。
一時的にでも削除・ブロック・距離を置くことで、“心のデトックス”が始まります。
ステップ④:自分の「本当の欲求」を見つめる
あなたが本当に求めていたのは、「彼」ではなく「愛されている安心感」かもしれません。
心理学では、これを「代替欲求」と呼びます。
本来満たすべきは“安心”や“自己肯定感”であり、相手ではなく自分自身の内側にある問題です。
ステップ⑤:小さな成功体験を積み重ねる
恋愛で失った自信を取り戻すには、小さな行動から。
旅行、資格勉強、ジム通い――どんなことでも構いません。
「自分で自分を満たせた」という体験が増えるほど、彼への依存は弱まります。
次回(第2回・後半)では、実際に「不倫から抜け出した女性たちの体験談③・④」や、
「心のリハビリ方法」「新しい恋への切り替え方」を具体的に紹介します。
体験談③:「やっと手放せたのは、彼を“好き”だからではなく、“苦しみ”だったと気づいた瞬間」
Cさん(29歳)は、同じ職場で出会った既婚男性との関係を2年続けていました。
彼は仕事ができて優しく、いつもCさんの相談に親身になってくれていました。
「家庭では冷たい妻に疲れている」「君がいるから頑張れる」と言われ、次第に惹かれていったそうです。
最初の半年は、会うたびに幸せを感じていたCさん。
しかし、誕生日やクリスマスなど、特別な日ほど孤独を痛感しました。
「家族優先なのは仕方ない」と自分に言い聞かせながらも、心のどこかで納得できない日々。
やがて、彼からの連絡が減り、突然の“音信不通”が訪れました。
彼が家庭に戻ったことを知ったCさんは、心身ともに崩れ、食事も喉を通らないほどに。
そんなとき、友人のすすめでカウンセリングを受け、「あなたが手放せないのは“彼”ではなく、“執着”」という言葉をかけられました。
その一言で、Cさんは涙が止まらなかったそうです。
「彼のことを考えない時間が怖かった。でも、少しずつ“自分の時間”を取り戻す練習をしました。
おいしいご飯を食べる、好きな映画を見る、少し高い化粧品を買う。
そういう小さなことで、“私は私を大事にできる”と感じられるようになったんです。」
Cさんは今、彼と完全に連絡を絶ち、新しい人生を歩み始めています。
「彼を忘れることより、自分を取り戻すことが大事だった」と語っています。
体験談④:「別れたあとの孤独に負けそうになったけど、幸せはちゃんとやってきた」
Dさん(38歳)は、10歳年上の既婚男性と4年半の関係にありました。
最初は「一線を越えない」と約束していたのに、いつのまにか深い関係に。
周囲には言えない秘密を抱え、心の中では常に罪悪感と寂しさが混ざっていました。
ある日、Dさんは「妻と旅行に行く」という彼の一言で、何かがプツンと切れたと言います。
「私は何をしているんだろう」と、自分を客観的に見たとき、涙が止まらなかったそうです。
その夜、彼の連絡先をすべて削除し、SNSもブロック。
数日間は喪失感で眠れず、何度もスマホを手に取りましたが、「戻らない」と決意しました。
半年後、Dさんは趣味の料理教室で出会った男性と交際をスタート。
「最初は前の彼と比べてしまう自分がいたけど、“安心できる人”がどれほど尊いかを知った」と語ります。
今では結婚を前提に穏やかな恋愛を楽しんでおり、「あの苦しい恋があったから、今の幸せを実感できる」と笑顔で話してくれました。
心理学で紐解く「不倫からの回復プロセス」
不倫からの回復は、“別れた瞬間”ではなく、“自分の心を再構築するプロセス”です。
心理学的には次の5つの段階をたどることが多いとされています。
① 否認期:現実を受け入れられない
「まさか彼がいなくなるなんて」「また戻ってくるかもしれない」――。
この時期は、脳がショックを緩和するために“防衛反応”を起こしています。
涙が止まらないのも自然な反応であり、無理に気持ちを切り替える必要はありません。
② 怒り・悲しみ期:感情の爆発
「裏切られた」「私は何だったの?」という怒りや悲しみがあふれます。
ここで感情を抑えこむと、後に“心のしこり”として残ります。
信頼できる人に話す、日記に書く、専門家に相談する――形は何でも構いません。
「吐き出す」ことで、心が整理されていきます。
③ 受容期:現実を受け止め、距離を取る
「もう戻れない」と理解しつつも、思い出が頭をよぎる時期です。
完全に忘れようとするより、「思い出してもいいけど、引きずらない」と考えるのがポイントです。
過去を否定せず、学びに変えることが回復の鍵になります。
④ 再構築期:自分の人生を取り戻す
趣味・仕事・友人関係など、“自分の世界”を少しずつ広げましょう。
恋愛以外の充実が増えると、脳内で幸福ホルモンのセロトニンが分泌され、依存が自然と薄れていきます。
また、新しい人との出会いを恐れずに。過去の恋を通じて、自分が本当に求める“愛の形”が見えてくるはずです。
⑤ 成長期:次の恋へ進む準備ができる
「彼との関係があったから、今の自分がいる」と思えるようになったとき、あなたはもう前を向いています。
過去を後悔ではなく経験として受け止められるようになれば、それは立派な“卒業”です。
Q&A:「不倫をやめたあと、どう生きていけばいい?」
Q1:罪悪感が消えません。どうすれば?
A:罪悪感は、“もう同じ過ちを繰り返さない”ためのサインです。
自分を責め続けるのではなく、「この経験をどう活かせるか」を考えましょう。
たとえば、人の気持ちに寄り添えるようになる、誰かの相談に乗れる――それだけでも、意味のある成長です。
Q2:彼から連絡が来て、また気持ちが揺れています
A:再び連絡を取ることは、“心のリセットボタン”を押すようなものです。
戻ると、また同じ苦しみを繰り返す可能性が高いでしょう。
心理的には「報酬予測誤差」と呼ばれる現象で、“次こそ幸せになれるかも”という期待が脳内に快感を与えてしまうためです。
ブロックや距離を保つことが、自分を守る最善の方法です。
Q3:もう恋愛が怖くなりました
A:それは「防衛反応」であり、心が回復する途中の正常なプロセスです。
無理に新しい恋を探す必要はありません。
まずは自分を大切にする時間を過ごし、自尊心を回復させましょう。
「自分を愛する力」が戻れば、自然と新しい恋が訪れます。
専門家の視点:「不倫関係からの脱出には“自己再定義”が不可欠」
心理カウンセラーによると、不倫関係に陥る女性の多くは「自分の価値を他人の評価に委ねている」傾向があるといいます。
「彼に愛されている=自分には価値がある」という図式を無意識に作り上げてしまうのです。
この状態から抜け出すには、“自己再定義”が必要になります。
自己再定義とは、「私は誰かに愛されなくても、価値のある存在だ」と自分に言い聞かせ、行動で示すこと。
たとえば、朝の散歩、読書、キャリアアップ、資格取得など、日常の中で“自分の力”を再確認することです。
この積み重ねが、心の自立へとつながります。
再出発のための実践ステップ
① 「恋愛」以外の喜びを見つける
美味しいものを食べる、旅行する、好きな音楽を聴く――小さな幸せを積み重ねましょう。
「幸せは恋愛だけで得られるものではない」と体感することが、回復の第一歩です。
② 「自分を責める」時間を減らす
過去を悔やむよりも、「今できること」に意識を向けてください。
後悔ではなく、“学び”として整理することで、心は軽くなります。
③ 「一人でいる勇気」を持つ
孤独を怖がる必要はありません。
むしろ、一人の時間を楽しめる人ほど、次の恋では“相手に依存しない健全な関係”を築けます。
④ 「未来の自分」に手紙を書く
半年後、一年後の自分へ――「今の苦しみを乗り越えたあなたへ」という手紙を書くと、
不思議と心が整理され、前に進む力が湧いてきます。
書き出す行為そのものが“自己対話”になり、潜在意識の整理につながるのです。
まとめ:「不倫は愛ではなく、学びのステージ」
既婚男性との関係は、決して簡単なものではありません。
そこには痛みも、後悔も、深い孤独もあります。
しかし、その経験を通して“自分が何を求め、どう愛されたいのか”を見つけることができるのです。
本当の愛は、「安心」「尊重」「誠実さ」でできています。
もし今、苦しい恋の中にいるなら、まずは自分を責めないでください。
あなたが悪いのではなく、愛し方を学ぶ途中なのです。
いつかきっと、「あの時の私がいたから今がある」と笑える日が来ます。
その日まで、少しずつ自分のペースで前に進んでいきましょう。
この記事のまとめ
- 既婚男性への恋は「依存」と「承認欲求」のバランスが崩れやすい
- 抜け出すには「現実を見る勇気」と「自己再定義」が鍵
- 過去を責めず、「学び」として未来に活かすことが回復の近道
- 恋愛は“幸せになる手段”であって、“自分の価値”を決めるものではない
――あなたが今感じている痛みは、決して無駄ではありません。
苦しみの中から“本当の自分”を取り戻したとき、次に訪れる恋は、きっと穏やかで優しいものになるでしょう。