恋をしてはいけない相手に恋をしてしまう――。
誰もが一度は経験するこの葛藤は、頭では「ダメ」とわかっていても、心がついていかないものです。

特に、「好きな人に彼女がいる」という状況は、自分の感情をどこに向けていいかわからず、罪悪感や嫉妬、そして自己嫌悪に苦しむ人が多いです。
今回は、匿名相談に寄せられたリアルな体験談と、心理学的な視点からのアドバイスを交えながら、どう気持ちを整理していけばいいのかを一緒に考えていきます。


匿名相談①:「彼女がいるのに、彼を好きになってしまいました」

「職場の同僚に恋をしてしまいました。でも彼には3年付き合っている彼女がいます。
わかっていても、優しくされると期待してしまって……。
LINEで話すだけでも嬉しくて、夜眠れないこともあります。
どうしたらこの気持ち、止められるのでしょうか?」

こうした相談は非常に多いです。
人は「手に入らないもの」ほど魅力的に感じやすいという心理があります。
心理学ではこれを「希少性効果」と呼び、すでに他人のものである相手に惹かれるのは、人間の脳が本能的に“価値の高いもの”だと錯覚してしまうためだと言われています。

【心理学的な背景】

恋愛における「禁止された関係」は、脳内でアドレナリンやドーパミンを多く分泌します。
つまり、理性で「いけない」と思えば思うほど、感情が高ぶるという矛盾が生まれるのです。

しかし、そこで自分の気持ちを責めすぎる必要はありません。
感情は理屈ではコントロールできないもの。
大切なのは、「この気持ちをどう扱うか」という視点に切り替えることです。


匿名相談②:「彼の彼女の存在が頭から離れない」

「好きな人のSNSに、彼女との写真がアップされていました。
見なければいいのに、つい見てしまって…。
そのたびに胸が苦しくなって、どうしようもなく泣いてしまいます。
自分でも、何をしてるんだろうって思うけど、見ないと落ち着かないんです。」

これは「比較の罠」と呼ばれる心理的なパターンです。
人は、自分と相手の“パートナー”を比較してしまうことで、
「自分の方が劣っている」「自分が選ばれなかった」と感じ、
無意識に自己価値を下げてしまう傾向があります。

しかし、この感情はあくまで「相手の女性」と「彼」が築いた関係の延長線上にあるもので、あなたが比較されているわけではありません。
「私が彼の世界に入りたい」と思うのは自然ですが、
「彼の世界を壊してでも」と思ってしまうと、苦しみが深くなります。

【対処法】

  • 彼のSNSを一時的に見ないようにする:ブロックまではしなくても、ミュートで距離を取る。
  • 彼以外のことに時間を使う:趣味、運動、友人との時間など、意識的に切り替える。
  • 自分の感情を「否定せずに眺める」:好きな気持ちを押し殺さず、「ああ、私はまだ彼が好きなんだ」と認める。

心理的に最も効果的なのは、「感情を否定しないこと」です。
否定すると反発し、ますます強くなります。
まずは「好きでいる自分を受け入れる」ことから始めましょう。


匿名相談③:「彼も私を気にしているような気がする」

「職場でよく目が合うし、ランチにも誘ってくれる。
でも彼には彼女がいる。
それでも『もしかして私のことが気になってる?』と思ってしまいます。
期待しないようにしても、気持ちが止められません。」

このような“脈ありかも”という曖昧な状況は、恋愛心理で最も中毒性が高いといわれます。
「手に入りそうで入らない」関係は、脳内で報酬系回路を刺激し、強い依存を生むのです。

【心理学的な解説】

この現象は「部分的強化」と呼ばれます。
ギャンブルなどで、「たまに当たる」仕組みが人を夢中にさせるのと同じように、
たまに優しくされる、たまに目が合うという“小さな報酬”が期待を増幅させます。

この状態にハマると、相手が彼女持ちである現実を見失いやすくなります。
つまり、「現実の彼」ではなく、「頭の中の理想の彼」と恋をしてしまうのです。


Q&A①:彼女持ちの人を好きになってしまったときの行動

Q1:気持ちを伝えた方がいい?

A:伝える目的によります。
相手を奪いたい気持ちで伝えるなら、トラブルの元になります。
ただ、「この気持ちを整理したい」「一歩前に進みたい」という理由なら、
“伝えて終わり”という形も選択肢の一つです。
その場合は、「付き合いたい」と迫るのではなく、
「あなたを好きだったことを伝えておきたかった」と、シンプルに伝えるのがポイントです。

Q2:距離を置いた方がいい?

A:はい。特に彼が優しいタイプなら、あなたを無意識にキープしてしまう可能性もあります。
距離を置くことは、彼を拒絶することではなく、「自分を守る選択」なのです。

Q3:彼のことを忘れるにはどうすればいい?

A:「忘れよう」とするほど難しくなります。
代わりに、「彼以外のことに心を使う」ようにしてみましょう。
恋愛以外で満たされる時間を増やすことで、自然と心のスペースが広がっていきます。


体験談①:「彼女持ちの彼に片想いした2年間」

「私は職場の上司を好きになりました。彼には彼女がいることを知っていましたが、仕事の中で支えられるうちにどんどん惹かれていって…。
2年間、彼を想い続けて、結局何も伝えずに異動しました。
つらかったけど、今は“好きでいられた時間”を大切に思っています。」
(29歳・会社員)

この女性のように、「報われない恋」でも、そこに確かに存在した感情は無駄ではありません。
心理学者のユングは「未完の恋こそ、心の成長を促す」と述べています。
誰かを好きになることで、自分の“理想の愛し方”を見つけていくのです。


恋愛観は年齢とともに変化する

10代の恋は「一緒にいるだけで幸せ」、20代は「付き合うことがゴール」、
30代は「将来を見据えた関係を築きたい」、
40代以降になると「安心できる関係を保ちたい」――。
このように、恋愛に求めるものは年齢とともに変わっていきます。

だからこそ、今の自分が「なぜ彼を好きになったのか」を見つめ直すことが大切です。
寂しさ?優しさへの憧れ?それとも、恋をしている自分が好き?
理由を言語化するだけでも、感情が整理されていきます。

次回(第2回)は、さらに深い匿名相談と、
「彼女持ちの彼を忘れられないときの具体的な心のリセット法」について解説します。

匿名相談④:「彼が彼女と別れたら、私の番だと思っていました」

「ずっと彼が好きでした。彼女がいるのも知っていたけど、うまくいっていないと聞いて期待してしまいました。
結局、別れたあとに彼は別の女性と付き合い始めて……。
『待ってた私って何だったんだろう』って、しばらく立ち直れませんでした。」
(27歳・受付)

このケースも非常に多く見られます。
「彼が彼女と別れたら、今度こそ自分の番」と思ってしまう心理の裏には、
『見返りの期待』があります。

恋愛心理学では、これを“報酬期待型依存”と呼びます。
「ここまで尽くしたのだから、きっといつか報われる」という考え方は、
自分を苦しめる結果になりやすいのです。

恋愛は「努力=報酬」ではありません。
愛情は義務や努力の結果として返ってくるものではなく、
タイミングと相性、そして相手の心の状態によって左右されます。


匿名相談⑤:「彼女持ちの彼と関係を持ってしまいました」

「飲み会の帰りに誘われて、彼と一度だけ関係を持ってしまいました。
そのあと彼から連絡が減り、罪悪感と後悔で押しつぶされそうです。
“あのとき断っていれば…”と何度も思います。どうすればこの気持ちを整理できますか?」
(30歳・営業)

このような相談も少なくありません。
感情が高ぶったとき、人は理性よりも「つながりたい」という欲求を優先してしまいます。
しかし、行動のあとに訪れる罪悪感は非常に強く、
そのまま心に傷として残ることがあります。

【心理的回復のポイント】

  • 「なぜそうしてしまったのか」を責めずに分析する: 孤独、寂しさ、優しさへの渇望など、背景を理解する。
  • 自分を許すプロセスを設ける:「過去の私はそうするしかなかった」と受け入れる。
  • 彼への執着を手放す: 罪悪感は「彼に認めてほしい」という依存の一種。認めるのは自分自身でいい。

後悔は「自分の価値観に反した行動をしたサイン」です。
だからこそ、今後の恋愛において「私はどう愛したいのか」を明確にできるチャンスでもあります。


奪う恋と見守る恋の違い

「彼女持ちの彼を奪う恋」と「彼を見守る恋」は、一見似ているようで本質が異なります。

【奪う恋】

  • 相手の現実(彼女の存在)を否定している
  • 自分の感情を最優先している
  • 最終的に罪悪感が残りやすい

【見守る恋】

  • 彼の幸せを尊重できる
  • 感情を客観視できる
  • 自分の心の成長につながる

恋愛心理の観点から言えば、「見守る恋」が精神的に成熟した愛の形です。
それは“見返りを求めない愛”であり、自分自身を成長させる経験にもなります。

人を好きになることは尊い感情です。
たとえ叶わなくても、その想いを否定する必要はありません。
むしろ、「誰かを本気で好きになれた自分」を誇りに思ってください。


心理学的な自己投影と依存

恋愛において「彼が好き」という感情の一部は、
実は自分の理想像を相手に投影していることがあります。

心理学ではこれを「自己投影の恋愛」と呼びます。
たとえば、彼の優しさに惹かれたとき、
それは「自分も優しくされたい」「自分もそうなりたい」という願望の反映であることが多いのです。

この構造を理解すると、恋愛感情の整理がしやすくなります。
つまり、彼への想いを“自分の成長エネルギー”に変換することができるのです。

【例】

  • 彼の仕事に対する姿勢に惹かれた → 「私も自分の仕事を大切にしてみよう」
  • 彼の優しさに惹かれた → 「私も人に優しく接してみよう」

このように、自分の感情を「成長の方向」に変えると、
恋が終わっても心の中に“糧”として残ります。


気持ちを整理する7ステップ

「彼女持ちの彼を好きになった気持ちを整理したい」――。
そのための実践的な7つのステップを紹介します。

  1. 1. 自分の気持ちを紙に書く: 「なぜ彼が好きなのか」「何がつらいのか」を文字にすることで感情を客観視できます。
  2. 2. 彼との接触頻度を減らす: 連絡を控えることで、脳内の報酬系を落ち着かせます。
  3. 3. 罪悪感を手放す: 好きになるのは悪いことではありません。行動を変えれば十分です。
  4. 4. 自分を満たす時間を増やす: 趣味・旅行・美容など、自分を愛で満たしましょう。
  5. 5. 信頼できる人に話す: 感情を外に出すことで、心が整理されていきます。
  6. 6. 「彼にしてもらいたかったこと」を自分にする: 優しくしてほしいなら、自分に優しく。愛してほしいなら、自分を愛して。
  7. 7. 新しい出会いに心を開く: 無理に誰かを探さなくても、「また誰かを好きになっていい」と思うことが第一歩です。

Q&A②:恋心と向き合うためのヒント

Q4:彼のことを諦めきれません。どうしたらいい?

A:「諦めよう」と無理に思わず、「今はまだ好きでいい」と自分に許可を出してみましょう。
気持ちを否定するよりも、自然に薄れていくのを待つ方が心が穏やかになります。

Q5:彼が彼女と別れたらチャンスですか?

A:すぐに動くのはおすすめしません。
別れた直後の男性は感情が不安定で、次の恋に逃げようとすることもあります。
少なくとも3ヶ月は距離を保ち、落ち着いてから判断しましょう。

Q6:彼を忘れたと思ったのに、ふとした瞬間に思い出して苦しくなります。

A:それは自然なことです。
思い出すたびに「まだ好きなんだな」と認めるだけでOKです。
時間が経つにつれ、思い出しても苦しさは和らいでいきます。


体験談②:「彼女持ちの彼を好きになって、変われた私」

「彼女がいる人を好きになって、すごく苦しかったけど、
その経験を通して“人を本気で好きになるってこういうことなんだ”と気づきました。
今では、『あの恋があったから、今の私がいる』と思えます。」
(33歳・医療事務)

恋が成就するかどうかよりも、「その恋を通して何を得たか」が大切です。
彼を好きになったあなたの気持ちは、決して無駄ではありません。


まとめ:恋をした自分を誇りに思っていい

誰かを好きになることに、正解も不正解もありません。
ただ、その想いをどう扱うかで、あなたの人生が変わります。

  • 好きな人に彼女がいても、その気持ちは尊い
  • 奪う恋よりも、見守る恋が心を育てる
  • 感情を否定せず、整理することが成長につながる
  • 恋は「結果」ではなく「気づき」で終わらせていい

どうか、彼を好きになったあなた自身を責めないでください。
その気持ちを経て、きっとあなたはより深く優しく愛せる人になっています。

次の恋は、きっともう少し穏やかで、あなたらしいものになるはずです。