「エッチのとき、どうしても“痛い”と感じる。でも彼には言えない。」──これは多くの女性が抱えているリアルな悩みです。誰にも相談できず、ネットでこっそり検索しては、同じ悩みを持つ人の声に共感しつつも、解決できずにいる人も多いでしょう。

学校の性教育では、避妊や感染症など“形式的な安全”ばかりが取り上げられます。しかし本当に知りたいのは、「痛いとき、どうすればいいの?」「恥ずかしくて彼に言えない…」といった、現場のリアルな問題ですよね。

この記事では、匿名相談として寄せられた“痛み”に関する悩みをベースに、心理学的な背景・体験談・そして実践的な解決策を交えながら解説していきます。

■匿名相談:彼に言えない「痛い」気持ち

相談者:Rさん(25歳・会社員)
付き合って半年になる彼がいます。初めてのエッチのときから少し痛みがありましたが、彼が優しくしてくれるのが嬉しくて、「大丈夫」と笑っていました。
でも、何度目かのときに強い痛みを感じて、思わず体が引いてしまいました。彼は「ごめん、大丈夫?」と言ってくれたけど、正直に「痛い」と言うのが怖かったんです。
「自分が下手だと思われたらどうしよう」「雰囲気が壊れたら嫌だ」と思ってしまって…。どう伝えたらいいのでしょうか?

■心理学的に見る「痛い」と言えない理由

女性が「痛い」と感じても、それを言葉にできない背景には、いくつかの心理的要因が存在します。

  • 1. 相手に嫌われたくない心理
    恋愛初期や関係を大切に思うとき、人は無意識に“相手に合わせる”傾向があります。心理学ではこれを「同調行動」と呼びます。特に女性は、愛情を維持するために我慢してしまう傾向が強いと言われています。
  • 2. 性に対する罪悪感や恥ずかしさ
    日本では、性に対してオープンに話す文化がまだ根付いていません。「自分がそういう話をするなんて…」という恥じらいが、正直に伝えることを妨げてしまうのです。
  • 3. 自分の感覚への不信感
    「痛いのは自分のせいかもしれない」「これが普通なのかも」と、自分の身体感覚を疑ってしまう人もいます。特に初体験や経験が浅い段階では、何が“普通”なのか分からず、我慢してしまうケースが多いです。

こうした心理は決して「弱さ」ではありません。むしろ、“相手を思いやる気持ち”が強いからこそ言えないのです。

■「痛み」を放置すると何が起こるか

体の痛みを我慢することは、身体的にも精神的にもリスクがあります。

  • 身体的リスク:無理をすると、膣内の炎症や小さな傷ができ、性交痛が慢性化することがあります。また、膣内の乾燥(潤滑不足)や緊張による筋肉の収縮が原因で、さらに痛みが悪化することも。
  • 心理的リスク:痛みを我慢し続けることで、“エッチ=怖い・痛いもの”というイメージが刷り込まれます。これは「条件づけ」と呼ばれる心理現象で、身体が無意識に拒否反応を示すようになってしまうのです。

つまり、「我慢していればそのうち慣れる」という考え方は危険です。放置すれば、関係にも影響を及ぼすことがあります。

■Q&A:彼に「痛い」と伝えるベストなタイミングは?

Q:エッチの最中に「痛い」と言っていいの?それとも終わってから?
A:一番良いのは、「痛みを感じた瞬間に、やわらかく伝える」ことです。
たとえば、「ちょっと待って、少し痛いかも」と、優しいトーンで言ってみましょう。ポイントは、“責めない言い方”です。
「あなたが悪い」と伝わると彼も防衛的になりますが、「私がちょっと痛いみたい」と主語を自分にすると、彼も受け止めやすくなります。

また、終わってからも「さっき少し痛かったけど、もう大丈夫」とフォローを入れることで、安心感が生まれます。これは心理学で言う「自己開示と信頼の循環」。正直な気持ちを共有することで、二人の絆が深まるのです。

■体験談①:「痛い」と言えなかった私の失敗

体験者:Mさん(28歳・公務員)
最初の彼のとき、私はまったく「痛い」と言えませんでした。彼は私が初めてだと知っていたけど、優しくしてくれているのに言えなかったんです。
何度かエッチをするうちに、痛みが強くなっていき、ある日ついに「ごめん、無理かも」と涙が出てしまいました。彼はショックを受けて、「もっと早く言ってよ」と言いました。
そのとき初めて、「我慢することは、相手を悲しませることにもなる」と気づいたんです。
それからは、次のパートナーには正直に伝えるようにしました。「少し痛いかも」と言うだけで、彼はスピードを落としてくれて、安心して身を委ねられるようになりました。

“我慢する優しさ”よりも、“伝える勇気”のほうが、関係を優しくします。

■心理学で解く「伝え方のコツ」

心理学では、「非攻撃的自己表現(アサーション)」という考え方があります。これは、相手を傷つけずに自分の気持ちを伝えるスキルです。

例えば、「あなたが激しすぎる」と言うよりも、「もう少しゆっくりのほうが気持ちいいかも」と伝えることで、相手に防御反応を起こさせず、自然に受け止めてもらいやすくなります。

このように、“私はどう感じたか”を軸に話すことで、コミュニケーションがスムーズになります。これは恋愛だけでなく、仕事や人間関係でも役立つスキルです。

■身体的な痛みの原因と対策

医学的に見ると、「痛い」と感じる原因はいくつかあります。

  • 1. 潤滑不足:興奮が十分でない、またはホルモンバランスの影響で潤滑が足りない場合。
  • 2. 緊張による筋肉の収縮:心理的な不安があると、体が無意識に固くなり、挿入時に痛みを感じやすくなります。
  • 3. 膣や子宮の構造的な個人差:奥の角度や形によって、特定の体位で痛みを感じやすい人もいます。
  • 4. 感染症・炎症:膣炎や性感染症などが原因で痛みが出る場合も。

対策としては、

  • ローションや潤滑ジェルを使う
  • 前戯の時間を十分に取る
  • 痛みが強いときは一度中断し、医療機関で検査する

「道具を使うなんて恥ずかしい」と思う人もいますが、快適なセックスのための工夫は、二人の関係を育てる行為です。

■体験談②:彼と一緒に“痛み”を乗り越えた

体験者:Yさん(31歳・看護師)
私は以前、性交痛で婦人科に通っていました。医師に「体に問題はないけれど、心が緊張してるのかも」と言われ、正直ショックでした。
その後、パートナーに勇気を出して話したら、「一緒に治していこう」と言ってくれたんです。
エッチのときも「痛くない?」と優しく聞いてくれるようになり、私も「今日はちょっと大丈夫かも」と正直に答えられるようになりました。
“痛い”を共有できた瞬間、心の距離も近づいた気がしました。

この体験を通じて感じたのは、「性は二人で作るもの」ということ。痛みも恥ずかしさも、共有すれば“愛のコミュニケーション”になるということでした。

■まとめ:痛みは「我慢する」ものではなく、「話し合う」もの

“痛い”と感じたとき、それは体からのサインです。そして、そのサインを無視することは、自分自身を軽視することにもつながります。

恋愛もエッチも、どちらか一方が我慢して成り立つものではありません。
「痛い」と言える関係こそが、安心できる本当のパートナーシップです。

次回(後半)では、さらに深く、「どうすれば自然に言えるようになるか」「彼が理解してくれない場合の対処法」「女性が感じる“恐怖の記憶”の乗り越え方」について掘り下げていきます。

彼に言えない“痛い”をどう伝えるか|後編:心のブレーキを外すためにできること

前回の記事では、「痛い」と感じても言えない心理的背景や、具体的な伝え方、体験談を紹介しました。
後半ではさらに踏み込み、「どうすれば自然に伝えられるようになるか」「彼が理解してくれない場合の対処法」「“痛みのトラウマ”を乗り越える心理的アプローチ」について詳しく解説していきます。

■なぜ“言えない”のか:心のブレーキの正体

「痛い」と言えない人の多くは、実は“体の問題”よりも“心の防衛反応”に原因があります。心理学では、これを「回避的防衛」と呼びます。
つまり、過去の経験や恐怖を思い出さないために、脳が自動的に“沈黙”という選択をしているのです。

たとえば、以前に強引なセックスをされた経験がある人や、「我慢するのが愛情」と思い込まされてきた人は、無意識に「また嫌な思いをしたくない」と心を閉じてしまいます。
このような心理的ブロックを外すには、単に“勇気を出す”だけでは不十分。
心の安全を取り戻すためのステップを踏む必要があります。

■ステップ1:自分の体を「味方」にする

痛みを伝えるためには、まず自分の体と仲直りすることが大切です。
多くの女性は、自分の体に対して“評価”の目を向けすぎています。鏡を見るとき、「太ってる」「胸が小さい」「形が変」と、自分を批判的に見ていませんか?
こうした否定的な認識が積み重なると、体は“緊張モード”のままになります。

おすすめは、「セルフ・ボディ・リスニング」という方法。
お風呂上がりなどリラックスした時間に、手のひらで自分の体を優しくなでながら、心の中で「今日もありがとう」と声をかけてみましょう。
これはマインドフルネス心理療法の一種で、体への感謝を意識することで、無意識の緊張がほぐれます。

“自分の体を受け入れる”ことが、痛みを伝えるための第一歩なのです。

■ステップ2:言葉にする練習を一人でしてみる

実際に彼に伝える前に、「どう言えばいいか」を自分の中で練習しておくと安心です。
声に出して言うのが恥ずかしい場合は、ノートに書いてみるのも効果的です。

たとえば、次のように書いてみましょう。

「あなたと一緒にいる時間はすごく幸せ。でも、ちょっと痛みを感じることがあるから、もう少しゆっくりしたいな。」

このように“愛情+要望”の順で伝えると、相手は受け入れやすくなります。
心理学的にも、まず肯定的なメッセージ(I like you/I care about you)を伝え、その後に要望を添えると、相手の防衛反応が和らぐことが分かっています。

■ステップ3:彼と話すときの“空気の作り方”

タイミングも大切です。
エッチの最中に言えなくても大丈夫。むしろ、「終わった後の静かな時間」や「日常の何気ない会話の中」で話すほうが自然なこともあります。

たとえば、映画やドラマで恋愛シーンを見たときに、「こういうときって、どんな感じなのかな?」と軽く話題を振ってみるのもいいきっかけになります。
彼が性に関して話すことに抵抗がないタイプなら、そこから自分の感じ方や不安を少しずつ共有していきましょう。

重要なのは、「痛い」と伝えることを“重い話”にしないこと。
深刻なトーンよりも、「ちょっと相談したいことがあるんだけど」と柔らかく切り出すと、相手も構えずに受け止めやすくなります。

■彼が理解してくれないときの対処法

残念ながら、中には「そんなの気のせいだよ」「慣れれば平気」などと軽く流す男性もいます。
そう言われると、女性はますます自分を責めてしまい、「やっぱり私が悪いのかも」と思い込みやすくなります。

しかし、ここで忘れてはいけないのは、「痛みを軽視する人は、あなたを大切にしていない」という現実です。

もし、あなたの体や気持ちを無視するような発言をする相手なら、それは“愛情”ではなく“支配”のサイン。
心理学ではこれを「感情的支配」と呼びます。相手の望む形にあなたをコントロールしようとする態度であり、放置すると心の傷が深くなります。

その場合は、勇気を持って距離を置くことも必要です。自分の心と体を守ることは、決して“わがまま”ではありません。

■体験談③:「彼に拒否された痛み」から立ち直るまで

体験者:Sさん(29歳・美容師)
私は前の彼に「痛い」と伝えたとき、「お前、感じないタイプなんじゃない?」と言われました。
その言葉がショックで、それ以来、エッチのときに体が強張るようになってしまいました。
でも、友人に話したら、「それはあなたのせいじゃないよ」と言ってもらえて、少し救われました。
半年後、新しい彼と出会い、最初に「過去に痛かった経験がある」と正直に伝えました。
彼は驚くほど優しく、「無理しないでね」と言ってくれたんです。
そのとき初めて、“痛みを受け止めてくれる人”がいることを知りました。
今では痛みもなく、心からリラックスして関われるようになりました。

「理解してくれない人」もいるけれど、「ちゃんと理解してくれる人」も必ずいる。
その違いを見極めることが、恋愛をする上で大切なスキルです。

■男性にとっても学びのチャンス

多くの男性は、女性の体の構造や感覚について深く知る機会がありません。学校でも“男性向け性教育”は避妊の話が中心で、女性の身体的・心理的な感受性について教わることはほとんどありません。

だからこそ、あなたが「痛い」と伝えることは、彼にとっても学びのチャンスになるのです。
あなたが感じた“痛み”を通して、彼も“相手を思いやるセックス”を学ぶことができます。
それが結果的に、彼自身の魅力を深めることにもつながります。

■心理療法的アプローチ:トラウマをやわらげる方法

もし、過去の経験や痛みがトラウマになっている場合は、心理的なアプローチも効果的です。

  • 呼吸法:深い呼吸を意識し、体の力を抜くことで、脳に「安全だ」と伝えることができます。
  • イメージ療法:自分が安心できる場所を思い浮かべ、その中でリラックスする練習をします。これはPTSD治療にも応用される方法です。
  • カウンセリング:専門家に話すことで、痛みの背景にある感情を整理できます。

痛みは「心」と「体」の両方に根を張るもの。だからこそ、どちらの側面からもアプローチすることが大切です。

■Q&A:彼にどう話せば理解してもらえる?

Q:「痛い」って言うと彼の気分を悪くしないか心配です。どう伝えたらいい?
A:ポイントは、“お願い口調”と“共感の共有”です。

たとえば、こう言ってみてください。

「ちょっと痛いかもしれないから、もう少しゆっくりめでお願いできる?」
「あなたと一緒にいるのはすごく嬉しいから、もっと気持ちよくなりたいの。」

このように「痛い」だけでなく、「あなたともっと良くなりたい」という前向きな意図を添えると、彼も受け止めやすくなります。

また、彼が「俺、下手なのかな」と落ち込んでしまう場合は、「そうじゃなくて、私の体がちょっと敏感みたい」とフォローすると良いでしょう。

■Q&A:どうしても怖くて伝えられないときは?

Q:怖くて、どうしても口に出せません。そんなときはどうしたら?
A:無理に言葉にしようとしなくて大丈夫です。

代わりに、“体のサインで伝える”方法もあります。
たとえば、彼の手を軽く押さえたり、「もう少しゆっくり」と目で合図したりするだけでも、十分に伝わります。
本当に信頼できる人なら、その小さなサインを感じ取ってくれるはずです。

どうしても言葉にできないときは、後でメッセージなどで伝えるのもOK。
「ごめんね、昨日少し痛かったかも」と軽く伝えるだけでも、心の負担はかなり軽くなります。

■自己肯定感を育てることが、痛みの克服につながる

「痛い」と言えない背景には、自己肯定感の低さも関係しています。
「自分の気持ちは後回しでいい」「我慢するのが大人」と思ってしまう人ほど、自分の体のサインを軽視してしまう傾向があります。

自己肯定感を高めるための簡単な方法は、「自分の中の小さな変化を褒める」こと。
たとえば、「今日は少し勇気を出せた」「前より自分を大切にできた」など、ほんの小さな一歩を認めてあげましょう。
この積み重ねが、“言える自分”を作っていきます。

■体験談④:「伝える勇気」で関係が変わった

体験者:Kさん(33歳・事務職)
私はずっと「痛い」と言えず、彼とのセックスが苦痛でした。
でも、ある日ネットで“言っていいんだ”という記事を読んで、少しずつ勇気が出てきました。
思い切って、「最近ちょっと痛いかも」と伝えたら、彼が「じゃあ今日はマッサージからにしようか」と笑ってくれたんです。
その優しさに涙が出ました。そこから、エッチの時間が“義務”じゃなく“楽しみ”に変わりました。

「痛い」と言うことは、関係を壊すことではなく、むしろ“育てる”こと。
お互いを理解し合うための、ひとつのコミュニケーションなのです。

■まとめ:勇気は「完璧」じゃなくていい

「痛い」と言えるようになるには、時間がかかっても大丈夫。
大切なのは、少しずつでも自分の感覚を信じていくことです。

彼との関係は、完璧である必要はありません。
“お互いに歩み寄る努力”がある関係こそ、長く続く愛の形です。

痛みを伝えることは、自分を守る行為であり、同時に相手を信じる行為でもあります。
それは、「私たちは一緒に成長できる関係だよ」というメッセージなのです。

どうかあなたが、自分の体と心を大切にしながら、安心して愛し合える関係を築けますように。

そしていつか、「あのとき勇気を出してよかった」と心から思える日が来るはずです。